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さつき品種「杜の都」

育ちは静岡ですが、生まれは福島県会津若松市のしんです。

両親も福島と山形なので、東北地方には何かと御縁があり、

結局は東北まであと少しの所まで戻り住み着いています。

 

以前ここでサツキの秋田五銘花についてお話しましたが、

東北6県の中には、他にもご当地品種がいくつか見られます。けっして多くはないのですが、

どれも個性的で、根強いファンを持つものが多いようです。

山形県の上の山キリンや福島県の松波は有名どころでしょう。

他にも東北地方最大の都市である宮城県仙台市にも、

市の雅称を付けた、杜の都という品種が存在しています。

ちなみにこの杜の都という呼び名は、

江戸時代初期の頃に伊達正宗公によって、

積極的に屋敷林としての植林活動を推奨したことから、

数百年の時を経て、あたかも杜の中に街があるように

見えることから付いたものだそうです。

 

 系統不明 藤紫色無地。

 花弁中央部にブロッチが鮮明に入る。中輪

 

その名を付けたサツキの杜の都は小品盆栽として定評のある、

仙台市の盆栽作家、三浦清恵津氏が作出したといわれ、

およそ50年前に命名されたもののようです。

系統こそ不明ですが、個人的には仙台だけに伊達紫あたりが

交配されているのではないかと推測(期待!)しています。

花は艶やかな藤紫色の単色花で、端正な丸弁が魅力。

特に花弁の質感はとても滑らかで、

知らぬ人が見れば、時に造花と見紛うほど。

中輪の花形ながらも、ひと花の存在感は大きく、

花弁の上部にクッキリハッキリとブロッチが入ります。

数花咲かせただけもそれなりのインパクトになるから不思議。

正統派タイプの整然とした樹や定番の盆養木よりも、

自然樹形や株立ち、根連なりなどの創作樹形に咲かせる方が、

不思議と合って見えるから面白いもの。

それこそ、挿し芽苗にひと花だけ咲かせても

かなりのインパクトを魅せつけられるのでは。

まあ、単色だけに好き嫌いは分かれそうですが、

花柄を気にしないで作れる分、

樹作りのハードルはさほど高くはないので、

初心者の方にもお薦めできる品種かと思います。

 

これまでに福島県では松波の作品だけの展示会、松波展や、

上の山キリンだけの展示会、上の山キリン保存会の展示、

他にも栃木県矢板市での矢板白の作品を集めた矢板白展など、

単独の品種のみでの展示会は数えるほどしかありません。

十数年前、仙台市の有志の愛好家の間から、

仙台市でも杜の都だけの展示会をという声も聞かれましたが、

現在のところ実現はしていないようです。

いつの日か、杜の都で杜の都だけの展示会が実現すること、

願っております。

さつき品種「三勝・紅千鳥」

本日は赤穂浪士討ち入りの日とのこと。

歴史には疎いですが、ピンポイントでの歴史好きのしんです。

有名武将の逸話より、文献に残る市井の人々の物語など、

あまり知られていない情報に興味があります。

 

あまり聞き慣れないサツキの品種に三勝があります。

純白地に藤紫色の絞りが入る品種で、

今でも時折展示会に顔を見せる程度の希少品種です。

大正時代の頃に九州は久留米で作出されたと言われる品種で、

交配された親品種の系統はわかっていませんが、

色彩や花形、作出地から考えるとおそらくは、

千歳錦あたりを親にしているのではとも推測できますね。

 

 三勝 系統不明(旧花) 純白地に藤紫色のあら絞り、

 竪絞り、覆輪、白無地。中輪

 

その変わった品種名から、命名の由来が気になり、

ネット検索でそのまま「三勝」と調べてみると、

それらしい記述として江戸前期の女舞芸人美濃屋三勝を発見。

元禄8年12月7日に大坂千日寺の墓地で、

馴染み客の赤根屋半七と心中とあります。

この事件を題材に扱った歌舞伎の演目「茜の色揚」として

悲恋情話の物語に仕立てられ、人気を博したようです。

上演後も浄瑠璃など様々な分野で題材にされたとのこと。

ひょっとすると、その三勝に由来するのかなと。

もちろん定かではありませんが、あくまで推測です。

 

ならばその心中相手であった半七の名は、

サツキの品種名としてあるかなぁと思い探してみたところ、

なんと文献上ですが紅千鳥の別名=半七という記述を発見。

赤根屋→茜→紅とくれば、あり得ない話じゃないですね。

 

 紅千鳥 三勝の実生 白地に緋紅色の小絞り、竪絞り、

 飛び入り絞り、吹掛け絞り、白・緋紅色無地。中輪

 

続いて紅千鳥を探してみると、

こちらはいくつか同名異種があり、半七がどの品種を指すか、

定かではありませんでした。

ただ、気になる事柄がひとつ。

昭和44年に日本皐月会に登録された紅千鳥は、

なんと三勝の実生とあるではないですか。

花柄は白地に緋紅色の絞りが入る花。

軽い波打ちが入るややキキョウ咲きとなる花を咲かせます。

しかし、近年はほとんど見かけることは無いような気も。

まさに半七が裏切る形となった貞淑な妻のせりふ、

「今ごろは半七さん、どこでどうしておじゃるやら…」

のように存在がわからない状態ですね。

 

別名を半七と呼ばれていた紅千鳥と

この三勝の実生で生まれた紅千鳥が同一かはわかりませんが、

どちらにしても不思議な縁を感じる気がします。

他にも同名異種に紅色無地の紅千鳥や紫紅色無地の紅千鳥、

薄黄色地に濃緋紅色の絞りが入る紅千鳥などもあるようです。

 

誰か三勝と紅千鳥を交配し、

ひとつの品種を作ってあげてはいかがでしょうか。

300年以上の時を超えて、

そこで初めて二人の恋が成就するかも。

皐樹展の日程変更です

さつき研究1月号で

来年の皐樹展の日程を

3月2日(金)〜4日(日)までと

お知らせしましたが、

その後日程の変更があり、

一週早い2月23日(金)〜25日(日)

となりましたのでお知らせします。

 

日程に合わせて宿泊を予約されている方は、

早めの変更をお願いします。

さつき品種「吉祥天」

身近で車の事故が増えています。

なので自分も気をつけねばなりませんね。

とりあえず、ゴールド免許のしんです。

 

サツキには仏教や神教に由来した品種名も数多く存在します。

八咫の鏡や勾玉、天女の光、水神などなど。

当然、著名な七福神の名前を持つ品種名もあるのですが、

それに関しては意外にもあまり多くはないようです。

文献上あるものも含め七福神の中で品種名になっているのは、

恵比須と福禄寿、布袋の三品種のみ。

サツキの品種で有名な若恵比須もそのひとつ。

さすがに毘沙門天、大黒天、弁財天、寿老人の名を持つ、

品種名は私の知る限りでは見当たりませんでした。

 

実はこのおめでたいとされる七福神ですが、

ひとつ足して八福神として信仰する地域もあるようです。

そのもうひとつの神様の名が、吉祥天。

仏教の守護神の天部のひとつに数えられ、

幸福や美、富などを顕す神とされています。

弁財天と並ぶ天女でもあり、美女の代名詞にもなっています。

また、吉祥は繁栄、幸運を意味するとも言われています。

この吉祥天という名前のサツキも登録されていますので、

今回はそれを紹介いたしましょう。

 

 (翠扇×白玲)×煌 

 白地に濃鮮紅色の大小絞り、竪絞り、伊達絞り、半染め、

 覆輪、白・濃鮮紅色無地。光琳咲き。小輪

 

吉祥天はサツキの咲き分けの基本的色彩である、

白地に紅色系の絞りを持つ品種です。

一見するとみんな同じに見えるかもしれませんが、

色彩の濃さ、花形、花柄の入り具合、葉性などで見分けます。

中でも吉祥天が突出している点は、絞り色の発色でしょう。

黒みを帯びたような深みのある濃い紅色で、

白地と相俟って、かなりメリハリが効いて見えます。

この色彩は、その後吉祥天を親とする品種にも引き継がれ、

白地紅色絞り品種の幅を広げることになるのです。

それに白地の花のブロッチは黄緑色を帯び、

紅色の花のブロッチは花色よりも濃密な紅色となり、

こちらに訴えかけてくるような花という印象すら受けます。

それと、五弁花が基本ですが、

時折6〜7弁の花も混じり咲き、実に賑やかです。

 

展示会にはまだチラホラと出始めたくらいの段階ですが、

小輪ながらもインパクト大で、派手さを誇る花であるため、

盆養木に仕立てると、目を惹くこと間違いなしでしょう。

それに、幸福、幸運、繁栄、美、富を意味する名であるため、

縁起担ぎとしてひとつ持っているのもいいかも。

さつき品種「亜輝姫」

漬物好きのしんです。

今年はたくあん漬けに挑戦してみようかなと

密かに思っております。

果たして、おいしくできるかどうか。

 

サツキの花と花を掛け合わせて新しい形質の花を作ることを、

交配といい、手がける人を実生家と呼びます。

現在、サツキ界における実生家の多くは、

関東周辺に住まわれている方がほとんどです。

それゆえに、花ものサツキを愛好する人の多くも、

関東に住まわれている人が多いようです。

 

古くは全国で様々な形質の交配が試みられた歴史があり、

山形や新潟、栃木、埼玉、千葉、東京、静岡、

それに西日本でも愛知、三重、奈良、大阪、兵庫、福岡など

サツキの産地は数多くあり、

地域名を冠した品種がサツキ界を賑わしてきました。

しかし近年は、ブームも遠く過ぎ去ってしまったこともあり、

細々と実生を楽しまれている方がほとんどでしょう。

とはいえ、実生家自体は熱い人が多い印象ですけども。

 

中でも中央の登録会に申請する一番遠い実生家と言えば、

福岡県大牟田市在住の長野嗣さんではないでしょうか。

九州でサツキの花ものを専門に扱う長野皐月園を営まれ、

いくつかの実生品種を世に出しています。

代表的な品種に亜輝姫があり、5年前に栃木県皐月会に

新花登録されています。

ここ最近、茨城県辺りの花季展示会に出品が見られましたが、

地方産の品種であり、おそらく関東で苗木生産がないため、

苗木や若木を関東で手に入れるのは難しいかもしれません。

 

亜輝姫の魅力は、ふくよかさを感じる花弁と白地の美しさ。

花の中央部が明るい黄緑色を帯び、

白の発色が爽やかに輝いて見えます。

親品種を見ると煌とあり、ひょっとして樹性に難あり?

かとも思いましたが、もう一方の親に彩春を使い、

改善されていると見て間違いないでしょう。

両親の色彩美をうまいこと取り込んだように感じます。

 

 彩春×煌 白地に紅紫色の大小絞り、竪絞り、

 吹掛け絞り、覆輪、白・紅紫色無地。普通咲き。大輪

 

性質的には控えめで、あまり絞りは入りにくいようですが、

個人的にはこの白の美しさを前面に押し出して、

要所に紅紫色の絞りと無地、そして覆輪が入れば、

スッキリと上品な花姿に仕上がるのではと考えます。

何が何でも派手にする必要はなく、

このような楚々とした品種もあって、

サツキの奥深さに通ずるというものです。

 

まだまだマイナーの域を出ない品種ではありますが、

おそらくひとつのきっかけさえ得られれば、

中央の花もの部門で戦えるだけの素質は有しているのでは。

個人的には五月晴に負けず劣らぬ品種であると感じています。

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